未払い残業代の請求方法|労働基準監督署を使って回収するやり方

お疲れ様です。未払い賃金の回収を2回成功させているベンゾー(@zangyoujigoku)です。
今回は労働基準監督署(通称「労基署」)を使って未払い残業代を請求する方法について解説します。
以前、こんなツイートをしました。
労働基準監督署を使って会社から未払い残業代を回収。
過去に2回成功しているので、その体験談をブログに執筆中です。需要あるかな?興味ある方は執筆終わったら連絡します。
— ベンゾー@ブラック企業が嫌い (@zangyoujigoku) August 6, 2019
どうも需要がありそうなことでしたので、記事にまとめておきます。
僕は労働問題の専門家として働いていますが、プライベートでは労働基準監督署を使って未払い残業代の請求と回収をしたことが2回あります。
※正確には「残業代の回収」と「1ヶ月分の給料の回収」を1回ずつの合計2回。


ベンゾー
あなたは今の会社でちゃんと残業代を払ってもらっていますか?
- そもそも残業代や給料がまったく出ない
- 働いているけど休憩時間扱いされてる
- 15分単位や30分単位でしか残業が付いていない
- 始業時間前にやらないといけない仕事がある
- 月~金だけでなく土曜も働いている
もしこれらに該当するなら、未払いの残業代があるかもしれません。是非この記事を読んでください。


現役SEの北田さん
正しい残業代の計算方法がわからない方は、先に「正当な残業代を貰ってる?未払いとして請求できる事例を解説」をご覧ください。
僕の実務経験上、間違えている方が多い残業代の計算方法をまとめて解説しています。
冒頭で申し上げたように、この記事では「労働基準監督署」を使った方法をお伝えします。
最初に言っておくと労働基準監督署での請求は結構めんどうです。
行政を使うってことは、対応時間は平日の日中だけですし、必ず1回は労働基準監督署に足を運ぶことにもなります。
ただし、大きなメリットとして「回収したお金は全額自分の物」という点があります。要するに弁護士に頼む場合と違って報酬が発生しないわけですね。
報酬がかからない分、手間暇がかかるというのがデメリットですね。
このメリット・デメリットを理解した上で労働基準監督署を使うという方は、是非最後までご覧ください。
記事の通りにしていただければ、確実に回収できるとは言えませんが、会社に請求をすることまでならできるようになります。
残業代の請求は労働基準監督署以外の手段もあります。
実際に請求・回収をする方法は「会社を訴えるリスクは無い。退職時にお金を回収する方法」で紹介しています。
大きく分けて3種類の方法があるので、自分にあったやり方で回収しましょう。
未払い残業代の時効は3年|早くしないと回収できる金額が減る
請求をするにあたって、知っておいて欲しいのが「いつの残業分まで請求できるのか」ということ。
結論を言うと3年前の残業代までしか請求できません。これは未払い賃金を請求する権利が3年で時効を迎え、消滅してしまうからです。


ベンゾー
労働基準監督署を使って未払い残業代を請求する流れ
証拠を準備する|最悪無くても大丈夫
まずは請求する前に証拠の準備が必要です。おおまかに言うと「残業代が未払いである証拠」です。
例えば以下のようなものです。
- 給与明細
- タイムカード
- 業務日報
- メール
ちなみに証拠がないといけないわけではありません。逃げるように退職した場合には、色んな証拠書類が無い場合もありますよね。
証拠があればより簡潔に話が進みますが、無くても時間をかけて進めることができる。という具合に考えておいてください。


ベンゾー
だから証拠を用意できなかったからって諦める必要はありません。
※もちろん証拠がないというのは嘘を付いてるって意味じゃなく、物理的に証拠を持っていないということです。
証拠は原本ではなく、写真やデータでも大丈夫です。退職前にスマホで撮影しておけば十分です。
まずは労働基準監督署に電話|簡単に状況を説明する
最初から労働基準監督署に訪問しても良いんですが、まずは簡単に状況を電話で伝えておくと良いです。
実際に相談を受け付けてもらうには訪問の必要がありますが、その際に持ってきて欲しい物なんかを教えてもらえますからね。
労働基準監督署の電話番号は「お住まいの自治体名+労働基準監督」でググれば出てきます。
管轄によっては色んな部署があって、どこに電話するべきか迷うと思います。
なのでとりあえずわかる電話番号にかけてみればOKです。担当の部署の人に代わってもらえます。


ベンゾー
実際に電話をすると、簡単に相談内容のヒアリングが行われます。
そして訪問しに来て欲しいと言われはずなので、後日訪問してみてください。
【重要】労働基準監督署に訪問|相談で終わりはダメ
ここは重要なんで、必読です。
実際に労働基準監督署に訪問をすると、担当の監督官の人に話を聞いて貰えます。基本的に相手の監督官に聞かれたことを答えていけばOKです。
【ここから特に重要!】
ここで重要なのが、相談で終わらせるだけじゃダメということです。
相談で終わらせるというのは、
- 自分の会社でこんな目にあった
- こんな嫌な上司がいた
- こんな嫌な仕事をさせられた
- しかも残業代が出なかった
という話だけ聞いてもらって終わりということです。
監督官としても、勝手に会社に指導をしに行くわけにいきませんし、勝手にあなたの残業代を請求することもできません。
監督官に動いてもらうには「依頼」をする必要があります。具体的には・・・
- 未払いの残業代を請求したい
- 違法な労働をさせている会社に指導して欲しい
という主張をする必要があります。
こういった労働者からの主張があって初めて監督官が動けるようになるんです。ちょっと面倒なやりとりですが、残業代のために割り切っていきましょう。


ベンゾー
たまに「労働基準監督に行ったけど、全然動いてくれなかった」という話を聞きます。
これは恐らく相談だけで終わらしており、具体的に依頼ができていなかったんじゃないかと思います。
自分自身で会社に請求する|書面を郵送でOK
続いて会社に未払い残業代の請求を行います。これは監督官が行うのではなく、あなた自身が行うんです。
ちょっと難しい話になりますが、請求という法律行為を代理できるのは弁護士など有資格者など特別な人だけで、いくら監督官であっても請求を代理することはできません。
「自分で請求って難しそう・・・」
ってのは僕も思ったことがありますが、実際はそんなに難しいことはありません。
なんせ、僕が初めて労働基準監督署を使って未払い残業代を回収したのは学生の頃。法律の知識どころか、社会人としての知識すら無い状態です。


ベンゾー
具体的な方法は、書面で会社宛てに「未払いの残業代を〇〇日までに××の口座に振り込め」という指示をするだけです。
文面なんかは監督官に聞けば教えてもらえるので安心してください。
このとき、具体的な未払い残業代の金額がわかれば良いんですが、おそらく不明なことが多いと思います。
わかっている方が良いのは当然なんですが、不明でもなんとかなるので安心してください。
僕も不明な状態で依頼しましたが、無事に残業代を回収できました。
期日に払われなければ、再度労働基準監督署に連絡
会社に請求をした時点ですんなり支払われればそれで終わりです。
ですが、無視されることもあると思います。ちなみに僕の場合は無視されました。
そんなときは、もう一度監督官に連絡をします。
この辺りで初めて労働基準監督署自体が動いてくれます。監督官の方から会社に連絡がいき、事実を確認した上で指導が入ります。
100%ではないですが、ここまで来た時点で普通のブラック企業なら払ってくれます。
会社を労働基準監督署に訴えることに罪悪感がある人へ
会社を労働基準監督署に訴えることに罪悪感を感じる方に1つ言わせてください。
あなたが会社を訴えることで、会社に残った人やこれから入社する人の将来を救っています。あなたが救ったんです。
どういうことか解説します。
あなたが会社を訴えることによって労働基準監督署は「あなた以外」の従業員にも同じことをしていないかをチェックをします。
もちろん他の従業員にも残業の未払いがあれば、まとめて支払うように指導が入ります。
会社の規模にもよりますが、大勢の未払い残業代を一気に払えと言われると相当なダメージです。従業員さんの人数によっては100万単位では済みません。


ベンゾー
もし、このダメージでブラック企業が1つ消えたとしたら、あなたの手柄です。
これからその会社に入る予定だった人や、在職中の人の未来をあなたが救ったと言っても過言ではないです。
だから会社を労働基準監督署に訴え、法律に則って未払い残業代を請求することに罪悪感を感じる必要はありません。


ベンゾー
労働基準監督署以外で未払い残業代を回収する方法
ここまで労働基準監督署を使った未払い残業代の回収方法をお伝えしてきました。
しかし労働基準監督署は平日の日中しかやっておらず、基本的に対面でのやり取りが必須。さらに場合によっては相談だけで終わらされてしまうというデメリットがあります。
そこで最後に労働基準監督署以外の方法で、未払い残業代を回収する方法を2つお伝えします。
1つは「労働組合の退職代行」を使う方法です。
「労働組合」は労働組合法という法律を武器にして、会社と交渉することができます。
もう1つは「弁護士」を使う方法です。
未払い残業代を専門としている「弁護士」なら、「裁判」という最強の強制力も視野に入れつつ会社と交渉することができます。
それぞれのメリット・デメリットは以下の通りです。
【労働組合の退職代行】
- 組合員が代わりに交渉をしてくれる
- 成功報酬が無いので比較的安い
- 24時間いつでも相談できる
- 退職時にしか使えない
- 弁護士と比べると強制力が弱い
【弁護士】
- 強制力が最強
- 全力で請求する
- 証拠書類の開示請求ができる
- 費用が高い
さらに回収方法別にオススメの人は以下の通りです。
回収方法 | オススメの人 |
労働組合の退職代行 | ついでに退職をする人向け |
弁護士 | すでに退職した人向け |
労働組合の退職代行や弁護士を使った方法について、「会社を訴えるリスクは無い。退職時にお金を回収する方法」でより詳細な解説をしています。


ベンゾー
まとめ|未払い残業代の請求
この記事で伝えたい結論
- 請求できるのは2年前の分まで
- 証拠はあれば良いけど、無くても何とかなる
- まずは労働基準監督署に連絡
- 労働基準監督署には「相談」ではなく「依頼」をする
- 自分で会社に請求
- 支払われないなら再度労働基準監督署に連絡
- 労働基準監督署に訴えることで、救われる人がいる
- 労働基準監督署以外に、労働組合や弁護士を使う方法もある
僕自身の経験から言っても、労働基準監督署からの指導に逆らっているケースは見たことが無いですね。
ただ、強制力が無いため絶対に回収できるってわけじゃないのが痛いところ。
残業代の請求は労働基準監督署以外の手段もあります。
実際に請求・回収をする方法は「会社を訴えるリスクは無い。退職時にお金を回収する方法」で紹介しています。
大きく分けて3種類の方法があるので、自分にあったやり方で回収しましょう。