やたらと給料の高い求人票の種明かし|労務のプロがざっくり解説

2019年6月13日

やたらと給料の高い求人票の種明かし|労務のプロがざっくり解説

お疲れ様です。SEから労務のプロへ転職したベンゾー(@zangyoujigoku)です。

今回は「固定残業代」というものについて、解説をしていきます。

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現役SEの北田さん

今転職活動してるんだけどさ、ここの会社の給料高くない?応募してみようかな。
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ベンゾー

どれどれ。あ~これは「高い」んじゃなくて「高くみせてる」だけだね。
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現役SEの北田さん

ん?どういうこと?高くないの?
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ベンゾー

高くないね。うまく見せてるけど、時給に換算したら結構安いよ。
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現役SEの北田さん

え~どういうこと??
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ベンゾー

「固定残業代」って言ってね、ある程度残業をすることをみこして、最初から手当に含めておくやり方があるんだよ。
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現役SEの北田さん

なにそれ。よくわかんないけど、そんなことやっていいの?違法じゃないの?
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ベンゾー

いやいや、これは合法なんだよ。この会社は「給料を高く見せる」っていう目的かもしれないけど、ちゃんと従業員のことを考えた目的でやってる会社もあるからね。
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現役SEの北田さん

知らなかった。危うく応募するところだったよ。
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ベンゾー

合法である以上、「知らなかった」なんて言っても無駄なんだよ。せっかくだから「固定残業代」について解説してあげるよ。
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現役SEの北田さん

わかりやすさ重視でお願いね!

 

転職活動をしている方にとって、給料は転職先を決める上で大事な要素ですよね。

では「固定残業代」という制度を知っていますか?

おそらく知らない方が大半じゃないかと思います。

 

実はこの制度を採用している会社の給与は、非常に高額に見えるんです。

「高額に見える」というように、実際は高額ではないんです。

この説明だけでは、何を言っているのかわからないですよね。

 

今回、労務のプロとして「固定残業代」について、ざっくり解説をしていきます。

この記事を読んでいただければ・・・

  • 「固定残業代」の何に注意するべきかわかるようになる
  • より良い求人を見つけられるようになる

となりますので、是非ご覧ください!

 

固定残業代、みなし残業とは?

「固定残業代」と「みなし残業」。実はどちらも同じ制度です。言い方が違うだけなんです。

ここではこれらの制度について解説をします。

ざっくりと説明すると、「一定時間までの残業代はすべて〇〇円」とする制度です。

 

使い方としては、まず固定残業代の名目で何時間分の残業代を支給するか取り決めておきます。

例えば、あらかじめ「30時間分の残業代を固定残業代として支給する」といった感じです。

このとき実際の残業が30時間以下であっても、30時間分の固定残業代を支払う必要があります。

つまり残業時間が0時間の場合も30時間の場合も、給料が同じと言うことです。

 

もし、残業時間があらかじめ設定した時間(上の例でいう30時間)を超えた場合は、はみ出した分を別途支給する必要があります。

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現役SEの北田さん

従業員が残業してもしなくても、残業代を払ってくれるってこと??
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ベンゾー

まあ若干の語弊はあるけど、そんなところだね。
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現役SEの北田さん

なにそれ。従業員が一方的に得してない?なんのメリットがあって会社はこんな制度を導入してるの?
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ベンゾー

確かにここだけ聞くと会社側にメリットが無さそうだね。でもちゃんと会社側にもメリットがあるし、そこが1番気を付けておきたいポイントだからよく聞いててね。

 

ここだけだと、会社側が一方的に損をして、従業員側が得をする制度に見えますよね。

ちゃんと会社側にも利点があるので、この制度を使っている会社があるわけです。

 

なんのための制度?本来の使い方

残業の抑制

固定残業代は残業時間の抑制に有効な制度なんです。

 

従業員目線で考えると、一定の時間までであれば、どれだけ働いても給料が変わらなくなります。

つまり毎日定時で帰っても、固定残業の時間ギリギリまで働いても同じ給料というわけですね。

それならさっさと帰ってしまった方が得ですよね。だから残業をしないように進んで努力してくれるようになるわけです。

 

会社目線で考えると、従業員が早く帰ってくれるなら、翌日の仕事能率アップや健康促進に期待できるというメリットがあります。

また、近頃は長時間労働に厳しくなってきているので、生活残業をするような従業員への対策として有効な手段なんです。

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現役SEの北田さん

確かに自分の会社が固定残業代を使ってたら、1分でも早く帰れるように努力するかも。

 

事務作業の効率化

みなさんの給料はおそらく会社の総務課の方が計算されていると思います。

その総務課の方の作業効率化として、固定残業代は有効な制度なんです。

 

残業時間の集計って実は結構大変な作業なんです。

従業員の出退勤時間を集計したり、休憩時間を差し引いたり、深夜労働がないか確認をしたり。

そんな作業を給料の締め日から支払日の間に終わらせないといけません。

 

会社によっては、残業の集計だけは翌月の給与に加算することにして、時間的な余裕を作るところもあります。そのくらい残業の集計は面倒な作業なんですね。

ところが固定残業代制度を使っている場合は、はみ出さない限り同じ給料になりますよね。

そのため給与計算にかかる時間を大幅に減らすことができるのです。

会社側からすると業務効率化として有効な制度ということです。

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現役SEの北田さん

給与計算ってそんなに大変なんだ。だから給料日前になると総務課の人がバタバタしてるんだね。

 

給料が高く見える求人票の種明かし

合法的に会社を良く見せる

実は固定残業制度は、合法的に会社を良く見せることができるんです。

 

転職活動をする中で注目するポイントの1つとして「給与」がありますよね。

雇用契約書や求人票で給与を記載するとき、基本給の他に手当を書いたりします。

 

このとき、「残業代が〇〇円」とかって書くことはできません。

だから・・・

  • 基本給や手当が低い
  • 残業が多いから残業代で給料が高くなる

こんな会社は、雇用契約書や求人票上では給料が低く見えるんです。

 

しかし固定残業代の場合は、雇用契約書や求人票に金額を書くことができます。というか書かないとダメです。

だから・・・

  • 基本給や手当が低い
  • 固定残業代を高く設定

こんな会社は、雇用契約書や求人票上では給料が高く見えるんです。

文章だけの説明だとわかりにくいと思うので、例を使って解説してみます。

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現役SEの北田さん

なんかわかったような、わからないような。残業代を含めることができるかどうかってこと?
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ベンゾー

それで合ってるよ。今から具体的な例を使って、固定残業代で給料が高く見えることを解説していくね。

 

合法的に会社を良く見せる|例で解説

A社とB社があります。それぞれ以下のような会社だとします。

A社

  • 1日8時間勤務の土日お休み
  • 基本給:200,000円
  • 営業手当:20,000円
  • 月の残業時間は35時間程度
  • 30時間分の固定残業制度を利用してる

 

B社

  • 1日8時間勤務の土日お休み
  • 6基本給:210,000円
  • 営業手当:30,000円
  • 月の残業時間は35時間程度
  • 固定残業制度は利用していない

赤文字の部分がA社とB社の違いです。

 

A社よりもB社の方が、基本給も営業手当も1万円ずつ高い

そしてA社では30時間分の固定残業制度を利用しており、B社では利用していないという設定です。

 

この場合、雇用契約書や求人票で記載できる給与額は以下のようになります。

A社

  • 基本給:200,000円
  • 営業手当:20,000円
  • 固定残業代(30時間分):37,500円
  • 合計:257,500円

 

B社

  • 基本給:210,000円
  • 営業手当:30,000円
  • 合計:240,000円

この時点だと、ぱっと見ではA社の方が給料が高く見えませんか?

しかし実際にA社とB社で35時間の残業をした場合、支払われる給料は以下のようになります。

A社

  • 基本給:200,000円
  • 営業手当:20,000円
  • 固定残業代(30時間分):37,500円
  • 残業手当(はみ出した5時間分):6,250円
  • 合計:263,750円

 

B社

  • 基本給:210,000円
  • 営業手当:30,000円
  • 残業手当(35時間分):47,728円
  • 合計:287,728円

結果はB社の方が23,978円高いということになります。

「雇用契約書や求人票ではA社の方が高そうに見えるのに、実際はB社の方が高い」という例でした。

 

もちろんA社に入って残業が30時間を超えないように働けば、その方が得します。

しかし、このような狙いのある会社では、だいたい固定残業代として設定した時間(今回でいう30時間)を超えるのが常態化しています。

つまり、固定残業代を使っている会社の場合、ぱっと見の金額だけで決めてはいけない。ということになります。

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現役SEの北田さん

マジか。知らなかったら絶対A社に入ってる。

 

ちなみにこの手法は違法ではなく、合法です。したがってA社に入ってから気が付いても、「理解してないあなたが悪い」と言われるだけです。

 

ブラック企業でよくある使い方|違法だからダメ

次は固定残業代を利用している会社で、たまに見かける違法なことです。

 

「わが社は固定残業代を利用しているから、いくら働いても残業代は出さなくて良い」

これはアウトです。「いくら働いても」はダメです。

固定残業代はあらかじめ設定した時間を超えた分については、残業代として別途払う必要があります。

 

しかしブラック企業の場合は、知ってか知らずか「いくら働いても残業代を出さなくて良い」と考えていることがあります。

固定残業代を利用している会社の場合、あってはならないのですがこんなケースもあるので、要注意です。

まぁブラック企業の場合は、固定残業代の前にもっとマズイことをやってそうですけどね。

 

まとめ|やたらと給料の高い求人の種明かし

  • 固定残業代を使って給料が高く見える求人を作れる
  • 実際に働くと、思ったより高くない
  • しかも合法
  • ただし、ブラック企業では違法に悪用してることも

固定残業代という制度を使って、合法的に求人票や契約書上だけ給料を高く見せている例を解説しました。

上でも解説したように、固定残業代という制度自体、本来は残業の抑制や事務作業の簡略化が目的の制度です。

しかし、給料を高く見せるという目的で使っている会社もあるのが事実です。

合法である以上、入社してから気が付いても手遅れです。

 

自分の給料がいくらになるのか。残業をしたらどんな計算をしているのか。

しっかりと見極めた上で、転職活動をするようにしましょう。